2007年3月31日土曜日

ベートーヴェン 「交響曲第2番」 セル指揮クリーヴランド管弦楽団


私がまだステレオ装置など持っていない頃、音楽が聴ける主な媒体はラジオ放送でした。FM放送はクラシックの番組を始終流していました。

今はラジオでの音楽をほとんど聴かなくなってしまいました。その頃は、レコードのコマーシャルも頻繁に放送されていました。

当時を思い起こすと、確か「ジョージ・セル、クリーヴランド管弦楽団」「ゲオルグ・ショルティ、シカゴ交響楽団」などの名前が毎日繰り返されていました。
コマーシャルを聞く度に、「件のレコードを聴いてみたいものだ」と、いつも心が騒ぐのでした。
セル指揮クリーヴランド管弦楽団による、ベートーヴェンの交響曲のコマーシャルは、一時期毎日のようにあったように記憶しています。
当時私は、真っ先に交響曲第1番と2番の入ったレコードを買ったのでした。聴いてみると…。これは何とスポーティーで、鮮やかな、目の覚めるような演奏だろうと、感嘆しました。
よく表現される言葉でいうと、「まるで、贅肉をそぎ落としたような…」特に第2番の演奏に痺れました。
第1楽章で、序奏から第一主題にかけての部分など、もうこれ以上の音楽表現があるのだろうかというぐらいの、鮮やかな音の進行があります。

第1楽章の演奏は、どうしてもセルの音楽が耳から離れません。今朝、久しぶりにセルの第2番を堪能しました。

2007年3月30日金曜日

モーツァルト 「魔笛」 ベーム、ベルリンフィルの盤

モーツァルトのオペラ「魔笛」のレコードには名盤と言われるものが数多くありますが、私にとってはベーム指揮ベルリンフィルの盤が手放せません。

ヴンダーリッヒのテノールに痺れるのは言うまでもないことですが、私には、それ以上に、このレコードでは女性陣の歌唱が何とも魅力的にきこえてくるのです。

レコードの第1面、三人の侍女の三重唱から、既に耳が釘付けになってしまいます。アンサンブルの見事さは言うまでもなく、ここではハーモニーが何と綺麗に浮き立ってきこえるのでしょう。

柔らかい声の質とともに、透き通っていて、清冽で、絶妙なバランスのハーモニー。

吉田秀和氏が音楽に関わる何かの本の中で、「歯にしみてくるような和音?」とか何とかというような表現を使われているのを読んだことがありますが、正にその言葉を使わせていただきたい三重唱なのです。

レコードの第2面では、私にとっては、このレコードの一番の聴きどころが現れます。第6場で歌われる、夜の女王のレチタティーヴォとアリアです。

最後の方に、「als Sieger sehen,So sei sei…」と歌われる、音が行ったり来たりする大変な難所の部分がありますが、もうここは人間の声を聴いているのではなくて、オーボエの技巧を聴いているような錯覚さえ覚えます。

歌っているのは、ロバータ・ピータースという人です。私はこの人のことはあまり知りません。しかし、本当に素晴らしい。

邪道な聴き方しかできませんが、私はこれで満足しているのです。

2007年3月29日木曜日

ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」 ストコフスキー編曲、指揮

ムソルグスキーのピアノ組曲「展覧会の絵」は、その独特の音楽の内容や表現技法に耳を奪われ、本当に凄い作品だと思っています。

この曲は好きで、ピアノのためのオリジナルや、オーケストラ、ギター、吹奏楽、シンセサイザー等々、色々な編曲物も聴きます。

オーケストラへの編曲物は、大変な数があるそうですね。有名なところでは、ラヴェル編・ストコフスキー編・アシュケナージ編・ゴルチャコフ編・カイエ編といったところがあげられるでしょうか。

ストコフスキー編曲の「展覧会の絵」を、久しぶりにレコード棚から出して聴いてみました。これは、ロンドン交響楽団の演奏ですね。

どうしても有名なラヴェル編と比べてしまうのですが、この編曲・演奏は、全体的にダイナミックスやリズムその他音楽表現に大きな幅があり、ラベル編より重厚で派手な印象が強く残ります。

ラヴェルとストコフスキーの民族性の違いを、正に浮き彫りにしているような感じです。

「ブィドロ」は、かなり速いテンポの演奏で、肩すかしを食わされます。牛にひかせた荷車の行進からすると、何だか軽々しい印象を受けます。

それにしても、この編曲・演奏もまた面白く聴けました。

2007年3月28日水曜日

シューベルト 歌曲「水面に歌う」 アメリンク

シューベルトの歌曲「水面に歌う」…この曲を聴くと、「シューベルトという人は、まさにメロディーを作る天才だったのだな」と改めて思います。

情緒豊かな、美しい曲ですね。伴奏ピアノがまた素晴らしく、彼の即興曲などの音楽を思い起こさせます。

これはまさに、歌とピアノの両方を楽しめる、お気に入りの一曲です。

曲は、水が流れていくようにピアノの流麗なメロディーで始まります。そして、「Mitten im Schimmer der spiegelnden Wellen」とドイツ語が語りかけてきます。

この絶妙なピアノと歌唱の重なりの部分を聴く度に切なくなってしまいます。

ずっと以前に、私はこの曲をギター伴奏によるバリトン独唱で聴いたことがあります。バリトンにギターは伴奏としてやや荷が重いという感じがしました。

しかし、ギターが泣いているような音を奏で、曲の雰囲気をよく出していたように思いました。

エリー・アメリンクのレコードをよく聴いていました。この曲だったら、色々なたくさんの声楽家のレコードを聴いてみたくなります。

2007年3月27日火曜日

モーツァルト 「管楽器とオーケストラのための協奏交響曲」

モーツァルトの作品に協奏交響曲といわれるものが、2曲あります。どちらも好きですが、私は管楽器とオーケストラのための作品の方を聴くことの方が多いですね。

この作品は、モーツァルトのものかどうか真偽は分からないと言われていますが、そのことについては専門家に任せるとして、とにかく本当に素晴らしい曲だと思います。

数年前、東京のオーケストラでこの曲の実演を聴いたことがありました。第1楽章の冒頭、弦楽器を主体とした主題が奏された時、恥ずかしながら私の目には涙がうかんだのでした。

端的に言って、耳に入ってくるその流麗なメロディーに感動したのです。

レコード棚には、ベーム指揮ベルリンフィルのレコードと、スウィトナー指揮ドレスデンシュターツカペレのレコードがありますが、私はもっぱらベーム盤を聴いています。

第3楽章をよく聴いています。変奏曲形式ですが、その主題からして本当に洒脱で楽しい曲相になっています。

フィナーレのフェルマータの付近、ベームの指揮はどんどんアチェレランドしていきます。管楽器奏者達もついて行きます。

スタジオ録音でのベームはこんなことをするんだっけ?と興味深く聴きます。

この部分が何とも私は好きなのです。楽譜はどうなっているかは分かりませんが、これこそ音楽表現の必然と思い、思わず唸ります。素晴らしい! 

2007年3月26日月曜日

ギター伴奏による「美しき水車小屋の娘」 シュライヤー、ラゴスニック


ペーター・シュライヤーがギターのコンラート・ラゴスニックと組んで、シューベルトの歌曲集「美しき水車小屋の娘」を最初に歌ったのは、もう30年ほど前のことでしょうか。

私は、FM放送によるザルツブルグ音楽祭での彼らの演奏を聴きました。

レコード棚の片隅に、当時放送を録音した、古ぼけたカセットテープが残されています。今では、テープ自体がもうワカメのようになっていて、ほとんど聴くことができません。

前後して、シュライヤーとラゴスニックの演奏は、テレビ番組でも放映されました。

映像では、ステージに向かってギターが左側へ配置され、シュライヤーが右側に位置取り、テープルを前にして、歌われていきました。

物語を語りかけるような、親密感を感じられる演出がなされていました。

この大好きな歌曲集。私には非常に新鮮に感じられ、興味を持って映像に見入り、音楽を聴きました。
これもVTRに残し、当時何度も見たことを覚えています。

その後LPレコードでも出ましたね。私は最近また同じ盤を手に入れ、以前に購入した物を合わせて同じものを3枚所有しています。

シューベルトが生きていた当時を再現して演奏しようとしたということが一つの目的だと思いますが、私にとっては、素晴らしい音楽の贈り物となっています。

2007年3月25日日曜日

グラズノフ バレエ音楽「四季」

グラズノフの音楽では、バレエ音楽「ライモンダ」とともに時々聴くのが同じくバレエ音楽の「四季」です。

グラズノフの「四季」は、冬から始まりますね。それから春、夏と進み、最後は秋で締めくくられています。 

これは農事暦のようなことになっていて、秋の収穫祭(酒神祭)が最後に来ているのですね。

この曲はバレエ音楽なので、言うまでもなく踊りがついています。 人間は登場しません。霜や氷、そよ風、麦穂などの自然現象や自然物が登場します。

風景や自然現象を一枚の絵画のように、音によって描写しています。

メロディーは大変に親しみやすく、また、それ以上にまるで絵画を見ているようで、雰囲気のある素晴らしい曲ですね。

私が所有しているレコードは、ハイキン指揮モスクワ放送交響楽団のものですが、切れが良く、ダイナミックで素晴らしい演奏です。特に私は「春」がお気に入りです。

2007年3月24日土曜日

フォーレ 歌曲集 アメリンク、スゼー

私には宝物のように大切にしているレコードがいくつかあります。アメリンクとスゼーが歌ったフォーレの歌曲集の5枚組のレコードもその一つです。

これは、東芝エンジェルから出ていたものですね。

一枚目の第一曲目。アメリンクの歌う「蝶と花」を聴いた時、いっぺんに気に入ってしまいました。まぁ、何と可憐な曲と歌唱だろう…。

かわいらしく、透きとおっていて、そして躍動感のある歌い回し。

スゼーの矍鑠とした、堂々たる、それでいて洒落た歌唱も見事と言うほかありません。私は彼のシューベルトはあまり聴きませんが、やはりフォーレは素晴らしいと改めて感じました。

素晴らしいのは、アメリンクとスゼーの歌唱だけではありません。ピアノ伴奏のボールドゥインの演奏がまた素敵です。

1枚目でかなり楽しんでいるのに、このレコードは5枚組なのです。5倍も楽しみがあるのです。

レコードを聴くことは、何と楽しくて、嬉しくて、贅沢で、素晴らしいことなんでしょう!。

2007年3月23日金曜日

ベートーヴェンの第九・第3楽章と卒業式

先日、中学校の卒業式に行ってきました。ある関係で、その卒業式に参加することになったのです。

数十年前、同じように卒業証書をいただいたことを思い出して、少し感傷的な思いにかられました。

卒業証書の授与の場面。耳に届いてくるのは、ベートーヴェンの第九交響曲の第3楽章でした。このような場面で、この曲が使われていたのですね。

とても、感動しました。

どのような理由で卒業式にベートーヴェンの第九の第3楽章を使うようになったかは知るよしもありません。

ただ、この曲を選んだ人が、「卒業式には第九の第3楽章が合うに違いない」と考えて流したのなら、私は拍手を送りたいと思います。

清らかで、美しく、そして時には思索的な調べ。卒業証書授与と見事にマッチした瞬間でした。

この曲によって、何だか大変知的な匂いのする、感動的な卒業式だったような気がします。

2007年3月22日木曜日

メンデルスゾーン 「交響曲第4番 イタリア」

中学校時代、どこの学校でもある給食時間でのお昼の放送で、クラシック音楽が週に2~3度かかっていました。

題名が分からない曲がほとんどでしたが、私は結構楽しんでいた方ですね。

そのお昼の放送で、ある時、メンデルスゾーンの「交響曲第4番、イタリア」がかかり、その弾むようなリズムの躍動感に痺れました。

同じ曜日に必ず一度この音楽がかかっていました。気になっていたので、放送部の生徒に題名を聞きにいきました。

その生徒が調べてくれ、私が気に入った曲は、そこで初めてメンデルスゾーン作曲「交響曲第4番、イタリア」ということが分かったのです。

音楽は終始細かに揺れ動き、明るさとほの暗さが交差して、不思議な情感を醸し出しています。最近はほとんど聴きませんが、以前はカセットテープに吹き込み、よく聴いていた時期がありました。

よく聴いていたレコードは、アバド指揮ロンドン交響楽団のものとクレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団のものです。

グノー 「小交響曲」

グノーの作品の中で、かわいらしく素敵な交響曲がありますね。「小交響曲」です。

私は木管楽器のアンサンブルは好きなので、この曲も時々取り出しては聴いています。

フルート、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットによる九重奏で、全曲通しても20分程度です。

昨年初めてこの曲を実演で聴きました。実演では、各楽器同士の音の繋がりやハーモニー、ダイナミックスなどがよくきこえてきて、楽しいですね。

曲は、モーツァルトのセレナードを思い起こさせます。

明るく華やかで、楽しい雰囲気に満ちあふれています。

音楽の内容がどうのこうの、精神性がどうのこうの…、というよりも、気楽に、無邪気に、音楽を楽しむという気持ちを持たせてくれるような曲ですね。

2007年3月21日水曜日

ダンディ 「フランス山人の歌による交響曲」 


ミュンシュ指揮、ボストン交響楽団のLP、ダンディの「フランス山人の歌による交響曲」を久々に聴きました。

しばらくレコード棚に眠らせてしまいました。そんなレコードが何枚もあり、勿体ないといつも思っています。もっともっと楽しまなければ。

さて、このレコード。冒頭のコールアングレの主題が懐かしさをともなって響きました。明るく人なつこいようなメロディーです。

フランスの何とかという地方の民謡を素材に作曲したということですが、何だか山の麓に住む人々の暮らしを、音で表現したような印象を与えます。

曲は、フランクの影響を受け循環形式によって構成されていますね。ピアノ協奏曲のような感じです。

久々に聴いたこのレコードは、廉価盤にしては比較的音も良く、ミュンシュの音楽表現も明るく伸びやかで雄大なスケールに満ち、楽しむことができました。

2007年3月20日火曜日

フランク 「ヴァイオリンソナタ」 ティボー・コルトー

フランクのヴァイオリンソナタは、何だか不思議な雰囲気を漂わせた曲として、私の耳にはきこえてきます。

ドイツ音楽の厳格な構築性とフランス音楽の「エレガンス」とが見事に融合しているような印象です。好きなヴァイオリン曲の一つです。

これは、彼の「出どころ」と関係があるのでしょうか。つまり、フランス国籍を持ってはいるが、実はドイツ系ベルギー人だということと…。

レコードは、昔から決定盤と言われ続けてきた、ティボーとコルトーによる古い録音と、グリュミオーのものを持っていますが、よく聴くのはもっぱらティボー盤の方です。

「ポルタメント奏法が時代がかって…」などとの評も見られますが、いっこうに古めかしさを感じず、むしろオシャレで曲趣をよく醸し出している演奏のように思います。

これらもティボーを聴き続けていくでしょう。

2007年3月19日月曜日

グレン・グールドの「ゴルドベルグ変奏曲」

グレン・グールドのゴルドベルグ変奏曲、1955年盤は、バッハを演奏するアプローチの多様性を可能にしたという意義があるのでしょうか。

音楽に関わる雑誌や書物でそのようなニュアンスの文章を何度か目にしてきました。

私は音楽学者でもありませんし、ゴルドベルグ変奏曲を聴いたのもこのレコードが初めてなのですから、何にも言えないのです。

それまでの「ランドフスカ等との演奏の違い…」「新しいバッハ像…」。……これらの説明も私にはあまりよく分かりません。

私は、ただただ、音楽を楽しむことができ、そのうえ心の糧にでもなるような音楽に出あることができればそれでよいのです。

私はこのレコードが出たての頃、ただその評判のみをよりどころにLPを買い、聴きました。ちょうど私はその頃大病を患い、病床で、カセットテープに吹き込んだものをラジカセで毎日聴いていました。

その時は、この音楽が私の心理状況にぴったりだったのです。この闊達で鮮烈を極めた演奏が心に届いてきたということです。

2007年3月18日日曜日

フランシスコ・アライサのレコード

フランシスコ・アライサのLPレコードやCDを少しずつ集めています。まだ集め始めたばかりで少ないのですが。

先日も、ネットオークションで、シューベルトの「美しき水車小屋の娘」を手に入れました。これは、私にとっては懐かしいレコードです。

これはアライサのレコードの中でも、ハイドンの「天地創造」と共に特に大切にしているものです。

所有しているのは、モーツァルトの「魔笛」(カラヤン、ベルリンフィル盤)、ハイドンのオラトリオ「天地創造」(カラヤン、ウィーンフィル盤)、シューベルトの「美しき水車小屋」のLPとCD。

また、私のコレクションには、10年以上前になるでしょうか、かつてNHKで放送されたシューマンの「詩人の恋」のVTRもあります。

私はこの人の声と歌唱が好きです。

一度だけ、彼のリサイタルをサントリーホールで聴いた(見た)ことがあります。オーケストラをバックにした、オペラのアリア集だったと思います。

アライサの艶っぽく、張りのある、通る声は、他では聴くことのできないものです。

2007年3月17日土曜日

マーラー 「交響曲第3番」

私のコンサート歴の中でも、聴いた回数の多い部類に入るのが、マーラーの交響曲第3番です。この曲、演奏終了までに90分以上もかかりますよね。

一曲としては非常に長く、聴き通すのに難儀するように思われますが、変化にとみ興味深く聴くことができます。それぞれの楽章を一つの独立した曲と考えると、また面白いですね。

両端楽章の素晴らしいオーケストレーションや第3楽章のトランペットソロ、第4楽章のソプラノ独唱等、聴きどころがたくさんあります。

第1楽章の終末部、遠くの方からきこえてきて最後に盛り上がる行進曲。最初に私はこの部分の「かっこ良さ」にハマってしまいました。クライマックスで、指揮台上で飛び跳ねる指揮者が多かったですね。

この曲は、随所に美しいメロディーが鏤められていますが、圧巻は何と言っても最終楽章ですね。この美しく、平静で、清らかな響きは、鬱陶しい日常生活から完全に解放してくれるような雰囲気があります。

自宅では、ホーレンシュタイン指揮ロンドン交響楽団の演奏を好んで聴きます。

2007年3月16日金曜日

モーツァルト 「弦楽四重奏曲第15番 ニ短調」

モーツァルトの弦楽四重奏曲集「ハイドン・セット」は、どれもが皆素晴らしいのですが、私が最も好きなのは、第15番ニ短調です。

この曲は、所謂「天才の苦悩」が曲の内容と結びついたものなのでしょうか。

第1楽章の冒頭や最終楽章のフィナーレは悲痛の音が聴けます。しかし、ここそこに見られる明るいメロディーは、暖かく、優しく、深く、感動的です。

私は特に、第1楽章の短調で始まった後現れる瑞々しく伸びやかなメロディーに何度も惹きつけられます。天才の素晴らしいメロディー。

私はかつて、この楽章だけをカセットテープに録音し、聴けるだけの場所、時間にかけて聴いていたのでした。

この曲に関わっては数種類のLPレコードを所有していたのですが、今手元にあるのは、ベルリン弦楽四重奏団のものです。

これは、録音もよく、気に入っていて、折に触れて聴いています。

2007年3月15日木曜日

グラナドス 「スペイン舞曲第2番 オリエンタル」 


グラナドスのピアノ曲「スペイン舞曲集」は、全12曲どれも魅力に溢れた曲ばかりですね。

第5番「アンダルーサ」が最も有名でしょうか。ギター編曲でもよく奏されます。どの曲も好きですが、私はとりわけ第2番「オリエンタル」を好みます。

知名度は「アンダルーサ」に譲りますが、その曲調は一度聴いたら忘れられないほどの素晴らしい内容です。この曲を聴くと、何だか切なくなってしまいます。

「オリエンタル」という曲名は、グラナドス自身がつけたのではなく、出版社によって決められたということです。それにしても、「オリエンタル」(東洋)という曲名はその曲調にぴったりのように思えます。

私が所有しているLPレコードは、アリシア・デ・ラローチャのものです。お国ものだけに、素晴らしいリズム感と音色感で、聴き手を引き込む演奏ですね。

2007年3月14日水曜日

ヴィオッティ 「ヴァイオリン協奏曲第22番」 グリュミオー

ヴィオッティのヴァイオリン協奏曲第22番は、メロディーが綺麗で時々レコードを取り出して聴いています。

この曲の第2楽章の一部は、確かNHK‐FMの何かの番組のテーマ音楽として使われていたような気がします。第2楽章でしたか。

私はそこでこの曲を知り、良い曲だと思っていました。

LPレコードは、ネットオークションで最近手に入れました。グリュミオーのヴァイオリン、デ=ワールト指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団のオーケストラのものです。

ヴィオッティは、モーツァルトの一つ年長で、この曲は彼の38歳の時の作品だそうですね。響きとしては、ロマン派に近いものを感じてしまいます。

2007年3月13日火曜日

モーツァルト 「ヴァイオリンとピアノためのソナタ」ホ短調 K304 

モーツァルトのヴァイオリン・ソナタの中でも、唯一短調の調性をもつソナタ第28番ホ短調をお気に入りの曲としている人はたくさんいるのでしょうね。私もそのうちの一人です。大好きな曲です。

私がこの曲を初めて聴いたのは、クラリネットとピアノによる二重奏でした。随分前のことになりますが、あるサロンコンサートで聴いたのです。

クラリネットのふくよかな音色とピアノの音が混じり合い、素晴らしいアンサンブルだったように記憶しています。

パンフレットには、この曲が元来ヴァイオリンとピアノのためのソナタであることが解説されていました。

私は早速、アルテュール・グリュミオー(Vn)と女流のクララ・ハスキル(P)によるPHILIPS盤(モノラル)を手に入れ、大切に大切に聴き続けてきたのです。

モーツァルトには短調の名曲が多いと言われますが、この曲ほど哀愁を漂わせて聴く者の気持ちに直接訴えてくる曲も珍しいのではないでしょうか。

今聴くと、何だか悲しみが心に強く突き刺さってくるようで、ちょっとつらいと思う時もあります。

2007年3月12日月曜日

フォーレ 組曲「ドリー」 ギター二重奏による

フォーレの曲は好きで、時々LPを取り出しては聴いています。歌曲集、ピアノ四重奏曲、ピアノ五重奏曲、レクイエム、ピアノ小品…。

組曲「ドリー」は、かわいらしい佳曲ですね。もともとはピアノ連弾用の組曲ですが、私はこの曲をギターの二重奏で知りました。

ジュリアン・ブリームとジョン・ウィリアムスの二人のギターの名手による演奏です。これは、ライブ録音でギター愛好家にとっては非常に注目されているLP(CD)なのではないでしょうか。

オリジナルのピアノ連弾も良いのですが、ギター二重奏というのもなかなか面白いですよ。

ギターという楽器の良さの一つは、多彩な音色を用いることができることだと思っているのですが、このLPでは、二人の名手によって絶妙な音色の変化とアンサンブルをもって表現されています。

素晴らしいですね。

私にとっては、オリジナル以上に、表現が拡大され、趣のある演奏に仕上がっているように感じます。ライブならではの音楽の高揚感も併せ持っています。

2007年3月11日日曜日

ディスカウ、バレンボイムのヴォルフのメーリケ歌曲集


フィッシャー・ディスカウとダニエル・バレンボイムが組んでフーゴー・ヴォルフの歌曲集を出していますね。

今はそれほどではありませんが、以前は取り出してよく聴いていました。

「メーリケ歌曲集」。これは、LPレコード3枚組で出ていましたね。このレコードでは、ディスカウのうまさは言うまでもなく、バレンボイムのピアノがまた凄い。

単なる伴奏としてディスカウにつけて弾いているのではなく、まるで一つ一つのピアノ作品を弾いているかのように、雄弁な表現なのですね。

私がよく聴いたのは、「癒えたものが希望に寄する歌」「少年とみつばち」「散歩」などです。

それにしても、この二人の共演は、何と深い音楽の表現を可能にしていることでしょう。

2007年3月10日土曜日

キングズ・シンガーズの絶妙なアンサンブル

キングズ・シンガーズのアンサンブルのことは、確かベルリンフィル百周年記念行事だか何だかでNHKFM放送で知りました。もう随分前のことになりますね。

その時、「何とまあ、凄い声楽家の集まりだろうか、何とまあずば抜けた、声楽家達のアンサンブルだろうか」と、驚嘆したものです。

その演奏会のアンコールだったと思いますが、「何曲知っている?」という名の曲を披露しました。所謂有名曲を次々とつなぎ合わせた曲ですが、その演奏の素晴らしさ、楽しさといったら何と言ったらよいか。

本当に抜群のテクニックとユーモアのセンス!。

その彼らがビートルズの曲のみを集めたLPレコードがありますね(今はCDですか)。私はこのレコードが好きで、第1面をよく聴きます。

楽しさと美しさの限りを尽くした声の芸術品!。

2007年3月9日金曜日

ビラ・ロボス 「ブラジル民謡組曲」 ブリーム

ブラジル風バッハで名を知られる作曲家ビラ・ロボスは、大変な多作家だったそうですが、彼の残したギターのための作品はギター愛好家にとってはまたとないご馳走になっているようです。

ギターのための作品のどれもが佳品といって良いですね。

「ギターのための協奏曲」など、神秘的な響きが進行する中にもロマンティックな薫りが漂う、不思議な曲です。

さて、ビラ・ロボスのギター作品の中で私が最も好きなのは、「ブラジル民謡組曲」です。どの曲もそれぞれに特徴をもった素敵な小品達です。

この組曲に関しては、ジュリアン・ブリーム以外に魅力的な演奏を私は知りません。全ての演奏がロマンの薫りに包まれた素晴らしい演奏です。

例えばワルツ・ショーロ。美しい音色を伴ってゆったりとしたテンポで歌われていきます。後半部分では、大きな呼吸の歌い方で音一つ一つに情感がこもっています。

ジュリアン・ブリーム。本当に素晴らしいギタリストです。

2007年3月8日木曜日

ロドリーゴ 「ある貴紳のための幻想曲」

ギターの名曲、あるいはロドリーゴの有名作品といえば「アランフェス協奏曲」ということになるのでしょう。

「アランフェス協奏曲」は、確かに素晴らしいです。しかし、同じロドリーゴの「ある貴紳のための幻想曲」は、私にとっては「アランフェス協奏曲」以上に魅力があり、こちらの方が好きなのです。

協奏曲と書きましたが。この曲は、構成がやや特殊ですよね。ガスパル・サンスのギターのための舞曲を素材にして作曲された協奏風組曲といったらよいでしょうか。

「ある貴紳のための幻想曲」の曲の成り立ちについては解説書に譲りましょう。

この曲の素晴らしさの一つは、バロック音楽と近代オーケストレーションの融合というところにあると考えています。

ギターがバロックの典雅な響きを奏でながらも、同時に近代的な和声を伴ったオーケストラがバックで響きます。何とも素晴らしい響きです。

2007年3月7日水曜日

バッハ 「シャコンヌ」は素晴らしい

バッハの無伴奏パルティータ第2番の終曲「シャコンヌ」は好きで時々聴くのですが、この曲の素晴らしさを言葉で表現するのはなかなか難しいことだと思っています。

私は色々な楽器等による「シャコンヌ」の編曲ものをいくつか求め折りにふれて聴いています。そんなに集めたわけではありませんが。

セゴビアを筆頭にギターへの編曲で6枚ほど、ファジル・サイのピアノ、ローレンス・キングのバロック・ハープ、斉藤秀雄のオーケストラ編曲、ストコフスキーのオーケストラ編曲などです。オリジナルのヴァイオリンの演奏ではシゲッティ、シェリング、ミルシテインのLPを所有しています。

これらのうち、私の最もお気に入りの「シャコンヌ」は…。


アンドレス・セゴビアのギターによるものなのです。それも、ステレオ盤の方ではなく、録音の古いモノラル盤の方をとります。

この盤には、興味深いことに編集が不完全な部分があります。途中で演奏が止まってしまうのです。ニ長調へと転調する、安らかな音の流れの部分がありますが、この部分で誰でも分かるような編集のミスがあり、そのままになっています。

にもかかわらず、この盤は素晴らしい。音楽が前へ前へと進んでいく勢いがあります。セゴビアの若い頃の強靱な意志といったものを感じさせる演奏です。

2007年3月6日火曜日

カリンニコフ 「交響曲第1番」 スヴェトラーノフ

カリンニコフの「交響曲第1番」は、以前から佳曲として知られ、色々なところで取り上げられていた曲ですね。

私は彼の交響曲は、「第2番」を先に知りました。スヴェトラーノフ指揮ソビエト国立交響楽団の演奏によってです。親しみやすいメロディーが出てきて、いっぺんに好きになりました。

「第2番」は何度も聴きましたが、「第1番」のことは気にかけようともしなかったのです。

大のクラシックファンとして知られ、膨大なコレクションをお持ちの俵幸太郎さんがクラシック音楽に関する著書を出しました。何年前のことでしょうか。

その著書に、カリンニコフをはじめグレチャニノフなど、ロシアの交響曲に佳品が多いというようなことが書かれていました。当然、カリンニコフの「交響曲第1番」の紹介もありました。

この著書を読み、まだ聴いていなかった「第1番」を聴いてみようと思いました。そして聴いてみて、「第2番」と同じようにいっぺんに好きになってしまいました。

第1楽章に出てくるしっとりとした美しいメロディーは、音楽を聴くことの楽しさを何倍にも広げますね。

2007年3月5日月曜日

ベートーヴェン 「ピアノ協奏曲第1番」 ミケランジェリ、ジュリーニ


ミケランジェリのピアノ、ジュリーニ指揮・ウィーン交響楽団によるベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第1番」は、その昔確かNHKFMの音楽番組で聴いたのでした。

その時、この演奏がとても気に入ったので、LPレコードを求めようと頭の片隅でいつも考えていたのですが、これまで果たせないでいました。そして、時が流れて昨年暮れ、LP通販店から手に入れることができました。

思い出しました。このLPレコードは、ライブの演奏だったのです。そしてまた思い出しました。私はこの演奏のある部分に心を動かされていたことを。

第1楽章で、音楽が進行する中で、まるで階段を降りてくるかのように、ピアノが4連音で高音から低音へとかけ降りてくるパッセージがあります。

私は、この部分のミケランジェリの演奏に感動したのです。明晰で一点の揺るぎもない、粒ぞろいのタッチ。正確無比なその打鍵に揺すぶられました。

時間にすれば数秒の、こんな部分の演奏に心を動かされたのであります。

2007年3月4日日曜日

タルレガ 「アルハンブラ宮殿の想い出」Ⅲ

「アルハンブラ宮殿の想い出」の演奏では阿部保夫氏のものが私のお気に入りだということは、前回にお話ししました。

そこへ、素晴らしい演奏のCDが登場することとなるのです。

あるギターショップで偶然に見つけたCDなのですが、演奏者は阿部氏と同じく日本人の北口功さんという方でした。こうして西洋音楽を日本人が優れた演奏をすること自体、大変嬉しいことですね。

私は勿論、タルレガの「アルハンブラ宮殿の想い出」の演奏を全て聴いたわけではありませんから、他にも素晴らしい演奏があるに違いありません。

しかし、現時点において、この「アルハンブラ宮殿の想い出」の演奏に関しては、もうこの北口さんの演奏があれば他にはいらないとさえ思ってしまったのです。(この考えは、本当は良くありませんね。音楽の楽しみ方を狭めてしまうことにもなりかねません。)

それくらい、私の耳には美しく感じられたのです。

使っているギターは、1867年にアントニオ・デ・トーレスという人が製作した名器だそうです。

他にこのアルバムには、バリオスのトレモロ曲も演奏されているのですが、とにかくこの北口さんのトレモロ演奏は美しい!。

2007年3月3日土曜日

タルレガ 「アルハンブラ宮殿の想い出」Ⅱ

「アルハンブラ宮殿の想い出」は日本人ギタリスト阿部保夫氏の演奏で初めて聴きました。珠玉のギターアルバムとかいうレコードにおさめられていた一曲です。

この演奏が、私の中では、この曲の演奏の基準となるものでした。トレモロのつぶが整っていて、端正で非常に美しい演奏です。

その後、イエペスやセゴビアなどの演奏を知ることになるのですが、私にはさほど感じ入るものがありませんでした(多分私の耳が悪いのでしょう)。

イエペスの演奏は、何だか歌い回しやタッチが「かわいている」ような気がします。セゴビアの演奏は、トレモロのつぶが揃っていないような印象を受けました。

更にその後聴いたジョン・ウィリアムスの演奏は、確かにテクニック的には申し分なく、トレモロも非常にしっかりとしたタッチでつぶが揃っているのですが、心に訴えかけてくるものがないように思えたのです。

その他、ラッセル、山下和仁、フェルナンデス…等色々な人の演奏を聴いてきましたが、それほど印象に残っているものはありませんでした。

私には、阿部氏の演奏が、心にずっと響き続けていたのです。

2007年3月2日金曜日

タルレガ 「アルハンブラ宮殿の想い出」Ⅰ

クラシックギターを愛好している人ならば知らない人はいない名曲、タルレガ作曲「アルハンブラ宮殿の想い出」。

私もギターを少しかじっていた者として、ご多分に漏れず、この曲には随分と魅せられてきました。

ギターを始めた頃、「禁じられた遊び」ぐらいしか知らなかった私は、この「アルハンブラ宮殿の想い出」を初めて聴いた時、その曲調の素晴らしさに胸を打たれました。

たった4~5分の短い曲ではありますが、美しく情感を持ったメロディーは、自分の心の中に「すうっ~」と入ってきたのです。

当時ステレオ装置もなかった我が家に簡易なレコードプレーヤー(プレーヤーとスピーカーがくっついていたもの)があって、この短い曲を1日に何度も何度もかけるのでした。

私はこの曲によって、クラシック音楽という、広く深く素晴らしい世界に踏み入ることができたのです。私にとっては、本当に大切なかけがえのない曲となっています。

2007年3月1日木曜日

シューベルト 「美しき水車小屋の娘」Ⅲ プライ

シューベルトの歌曲集「美しき水車小屋の娘」のLP、CDの中では、最も聴いた回数の多いのがヘルマン・プライのバリトン、レオナード・ホカンソンのピアノ伴奏によるLPです(フィリップス盤)。

ある時は、日がな一日というように、飽きもせず繰り返して聴いていました。

前にも書きましたが、この「美しき水車小屋の娘」の魅力の判断基準となる第一曲「さすらい」の歌唱…。中庸を得たテンポですが、リズム感のあるピアノ伴奏に乗ってプライの艶のある美声が耳に届いてきます。

3番の歌詞「Die gar nicht gerne stille stehn, Die sich mein Tag nicht mude drehn」のフレーズ。私としては、プライの「さすらい」の一番の聴きどころだと思い、その部分にさしかかると思わず身を乗り出してしまうほどです。

その発声の切れ味といい、表現といい、本当に素晴らしい!。
このLPは、今3枚目ですが、私の宝物の一つとして長く聴いていくこととなるでしょう。

プライの「美しき水車小屋の娘」(ロンドン盤)ということでネットオークションで買ってみました。素晴らしい歌唱には違いないように思いますが、フィリップス盤には及ばないような気がしました。